災害時の支援体制について(要望)
入札制度について〔財政局長-401、402、404、上下水道事業管理者-401、402、403、404、三浦副市長-405〕
◆14番(野田雅之) おはようございます。私は通告に従いまして、一問一答で質問させていただきますが、1問目の災害時の支援体制についてですが、事前のやりとりである程度把握をいたしましたので、要望のみさせていただきます。
本年も国内において、熊本地震や鳥取県中部地震、また、福島などでの地震が発生し、改めて日本が地震大国であることを痛感させられた1年でありました。本市においても、首都直下地震も想定される中、発災時の迅速な対応はその後の被害状況を大きく左右いたします。昨年の7月、第3回定例会において、本市退職職員による災害時の支援体制の確立について質問させていただき、上下水道事業管理者からは、こうした取り組みは本市にとっても大変有用であると考えられ、他都市の事例を参考にして検討してまいりたいとの答弁を受けたところです。その後、政令市の約半数以上がこの制度を確立していることもわかり、現在検討を進めているとのことであります。他都市の事例も参考にしながら、有事の際、必ず生かされる在職時の技術や知識により、市民のためにボランティアとして支援、協力を得られるよう、一日も早い制度化に向けてさらに踏み込んで取り組んでいただくことを要望いたします。
それでは次に、入札制度について質問させていただきます。本年8月、座長には三浦副市長、副座長には菊地、伊藤両副市長、委員には工事等の入札契約事務にかかわる局長がメンバーとなる入札契約制度・発注等検討委員会がスタートいたしました。その目的は、本市が発注する工事等に係る適正な入札契約事務の執行及び市内中小企業者の育成を図るため、入札契約制度の改善、適切な分離または分割発注等の推進及び設計書の設計積算の適正処理を図ると記されています。近年、担い手3法の改正や品確法の改正、また本年4月に施行されました川崎市中小企業活性化のための成長戦略に関する条例の制定など、入札契約制度を取り巻く環境は変化しており、本市においても、市内中小企業者にとって有意義な見直しが進められていることは大いに評価されるところであります。入札契約制度に関しては、常に時代のニーズに沿って改善が求められるわけですが、今回は本市における予定価格5億円以上の大型の土木工事系の発注案件を対象に問題提起させていただきます。本市において、ある一定以上の大型の物件に対して総合評価落札方式が採用されています。そこで、従来の一般競争入札から現在の総合評価落札方式を導入するに至った経緯、また、総合評価落札方式の概要やメリット、デメリット、また、適用対象とする予定価格以上の案件での執行率について入札契約制度全般を担う財政局長に伺います。
○副議長(菅原進) 財政局長。
◎財政局長(大村研一) 総合評価落札方式についての御質問でございますが、総合評価落札方式は、単に価格だけで落札者を決定するのではなく、競争参加者の技術的能力など、価格以外の要素も評価することにより、総合的に最もすぐれた者を落札者として決定する方式でございます。導入の経緯につきましては、全国的に厳しい財政状況を背景に公共投資が減少している中で、入札価格競争が激化し、不良工事の発生、工事の安全性の低下、下請負業者や労働者へのしわ寄せ等、公共工事の品質低下が懸念されていた状況があり、平成17年4月に公共工事の品質確保の促進に関する法律が施行されております。この法律の中で、品質確保のための主要な取り組みとして、総合評価落札方式の適用について示されたことを受けまして、市長部局においても、平成19年度から試行、平成22年度から本格実施をしており、上下水道局におきましても、平成20年度から試行、平成24年度から本格実施をしているところでございます。現在、市長部局の予定価格1億5,000万円以上、ただし、業種「建築」については3億円以上、上下水道局の2億円以上の工事については、全て総合評価落札方式にて執行しております。評価の仕組みにつきましては、入札参加者から提出された評価項目算定資料に対して評価を行い、算出した数値を入札価格で割った値が最も高い者を落札者としております。主な評価項目といたしましては、企業の同種工事の施工実績、配置予定技術者の能力としての同種工事の施工実績、企業の信頼性・社会性、地域貢献度、次世代育成への取り組みなどとなっております。メリットといたしましては、公共工事の品質向上と、それに伴うトータルコストの削減、地元企業の育成などが挙げられ、デメリットといたしましては、入札手続にかかる時間と事務量の増大などが挙げられるところでございます。以上でございます。
○副議長(菅原進) 野田議員。
◆14番(野田雅之) それでは、ここからは上下水道局の予定価格5億円以上の土木案件を取り上げてまいります。これらの案件の入札説明書や総合評価一般競争入札のお知らせにおいて、共同企業体を構成して参加を求められますが、その中で共同企業体代表者に対して川崎市工事請負有資格審査申請時における経営事項審査結果通知書の土木、下水管渠、水道施設などの総合評定値1,200点以上を設けているケースが見受けられますが、おおむねその点数を参加条件としているのか、また、その評定値を導入する理由をお聞かせください。加えて、その評定値の条件を満たす企業は同工事の施工能力を備えているとの認識のもとで設定されていると思われますが、見解を工事所管局でもあります上下水道事業管理者に伺います。
○副議長(菅原進) 上下水道事業管理者。
◎上下水道事業管理者(金子正典) 総合評定値についての御質問でございますが、初めに、5億円以上の工事案件につきましては、おおむね総合評定値1,200点としておりまして、国土交通省において直轄工事を発注する際の基準を参考としたものでございます。次に、この条件を満たす企業につきましては、施工能力が確保でき、工事の質の低下を招くおそれのないものと認識しているところでございます。なお、これらの工事案件につきましては、共同企業体への発注となりますが、中小企業者を共同企業体の構成員とするよう求めることで、市内業者の受注機会を確保するよう配慮しております。以上でございます。
○副議長(菅原進) 野田議員。
◆14番(野田雅之) 管理者からは、この条件を満たす企業については、施工能力が確保でき、工事の質の低下を招くおそれのないものと認識しているとのことであります。また、これらの工事案件については、共同企業体へ発注し、市内業者の受注機会を確保するよう配慮しているとのことで、その部分は大いに評価されるところであります。それでは、直近の平成27・28年度の川崎市競争入札参加資格審査申請者名簿における土木、下水管渠、水道施設の業種における総合評定値1,200点以上の市外、準市内、市内の登録件数を財政局長に伺います。
○副議長(菅原進) 財政局長。
◎財政局長(大村研一) 登録業者についての御質問でございますが、平成27・28年度の業者登録における経営事項審査の総合評定値が1,200点以上の登録業者数は、業種「土木」が市外業者53者、準市内業者60者、業種「下水管きょ」が市外業者30者、準市内業者52者、業種「水道施設」が市外業者21者、準市内業者25者となっておりまして、いずれの業種におきましても市内業者の登録はございません。以上でございます。
○副議長(菅原進) 野田議員。
◆14番(野田雅之) 答弁では、市外21者、準市内25者、計46者等が登録をしており、市内の登録はないとのお答えで、総合評定値1,200点で下限を設けた場合、施工能力を担保できる相当な数の企業がエントリー可能であることがわかりました。では、改めて上下水道局の担う予定価格5億円以上の大型案件に対してですが、今年度を含む直近5年の平成24年度から平成28年度現在における案件について、年度ごとの1者応札案件数と複数応札案件数、また、同様に年度ごとの1者応札と複数応札における平均落札率を上下水道事業管理者に伺います。
○副議長(菅原進) 上下水道事業管理者。
◎上下水道事業管理者(金子正典) 5億円以上の工事案件についての御質問でございますが、初めに、応札数についてでございますが、平成24年度は、1者が2件、複数が4件、平成25年度は、1者が2件、複数が2件、平成26年度は、1者が2件、複数が2件、平成27年度は、1者が1件、複数が2件、平成28年度は現時点で3件全件が1者入札となっております。次に、平均落札率についてでございますが、平成24年度は、1者が99.53%、複数が76.91%、平成25年度は、1者が96.79%、複数が76.46%、平成26年度は、1者が98.60%、複数が99.56%、平成27年度は、1者が99.04%、複数が83.95%、平成28年度は1者入札のみで99.45%となっております。以上でございます。
○副議長(菅原進) 野田議員。
◆14番(野田雅之) ただいま答弁いただきました応札者数と平均落札率を表にしたものがこちらになります。ディスプレーをお願いします。平成24年度から平成28年度現在、黄色の文字が1者応札の件数と下段が落札率であります。例えば平成24年度ですと、2者以上が4件、1者入札が2件であります。平成28年度ですと、3件の応札全てが1者入札ということになります。1者入札が約99%の落札率であることがわかっていただけるかと思います。次に、平成24年度から平成28年度の入札、全20件の一覧を記しております。1者入札が黄色の文字、赤枠はWTOの物件となります。全20件のうち、1者応札をしたA社が10件を受注しております。B社が5件の落札になっておりまして、非常に偏りが見られることがわかると思います。年々、応札者が3から2に減り、2から1に減っている状況がはっきりとわかると思います。このような状況は何をあらわすかということで、業界の方々にいろいろヒアリングをさせていただきました。その理由がこちらになります。川崎市の上下水道局の総合評価落札方式のガイドラインがあるんですけれども、こちらの9ページと10ページにある項目であります。企業の施工実績、あと配置予定技術者の施工実績で本市3年という限定をつけておりまして、配点の中でその部分が黄色い文字、3点が3カ所、過去3年の本市の実績というところで縛りを受けております。本市発注以外の赤字文字のところが1.5点ありますので、ここはプラス1.5ということで、7.5点がマイナスとなります。総合評価落札方式の計算式ですと、仮に30点を満点とした場合、青文字で記した130点満点で仮に13億円の応札額としますと、計算式に入れますと黄色の文字の10点になります。赤文字が、先ほどのマイナス7.5点を引いた場合、122.5点になりますので、応札額が12億2,500万円にならないと10点になりません。点数が高いほうが落札となりますので、ここでは13億円を130点で割りますと、1点1,000万円の勘定になりますので、約13億円で7,500万円、4倍の52億円で、最初から3億円ぐらいのマイナスということになります。実際の配点は30点満点でなく、例えば黒川配水池の耐震補強及び築造工事だと26点を30点に換算しておりますので、そのケースの場合はマイナス7.5点がマイナス8.6点にグレードアップされます。その他の工事も30点というものは余りなくて、26点、27点なので、持ち点、いわゆるマイナスの点数がさらに広がる形になります。
他の自治体の状況を確認したところ、私が調べた件数なのでおおむねなんですけれども、神奈川県の場合は技術提案のみで施工実績等の配点はない、17件のうち16件が一般競争入札で、1件が総合評価落札方式。横浜市の場合はいろんなケースがあったんですけれども、実際45件中4件しか総合評価落札方式はありませんでした。見ていただくように、応札者が県の場合9、横浜市の場合2から4で、落札率もやはり少し下がって70%台、80%になっております。ケース②ですけれども、相模原市は政令市移行に伴いまして、総合評価落札方式をかなり採用しているんですけれども、実績としては、同市ではなく全国の実績過去10年での経験を求めております。応札者数は3から9、随分応札し、競争原理が働いていることがわかるかと思います。その他の政令市を幾つか調べたんですけれども、やはり過去15年の全国であったり、そういう要素が非常に強いので各社が入りやすい環境が整っております。
それでは、2者以上の応札との比較をいたしたく、平成24年度から平成28年度現在までの対象とした案件において、5年平均の予定価格に対する低入札調査基準価格率を上下水道事業管理者に伺います。
○副議長(菅原進) 上下水道事業管理者。
◎上下水道事業管理者(金子正典) 平均調査基準価格率についての御質問でございますが、平成24年度から現在までの平均調査基準価格率につきましては91.13%でございます。以上でございます。
○副議長(菅原進) 野田議員。
◆14番(野田雅之) 答弁では91.13%という回答でありました。そこで改めて、川崎市の総合評価の基準を確認させていただきます。これは上下水道局ですけれども、一般競争入札では、建築以外が2億円以上、建築工事は3億円以上から24.7億円未満で、市長部局の場合1億5,000万円以上ということになっております。WTO案件は24億7,000万円以上で、低入札価格というものが与えられていますけれども、その価格、赤の文字を下回ると失格基準までの間で低入札の調査がされるということであります。失格基準の価格がWTOの案件に関しては実際ないということで、このような表をつくらせていただいております。
先ほど2枚目に示した1者入札の表であります。ここで5番の質問でお聞きしました調査基準価格率91%を採用しまして、1者入札の予定価格に、先ほど記しました1者の応札落札率99%とか96%を入れて、その差①マイナス②を予定価格に掛けた差が落札価格の差であります。10件の1者応札に対して調査基準価格との差を合計しますと、落札価格の差がこの4年間で11億円——これは小数点以下を切り捨てていますので、細かな数字は割愛させていただきますけれども、仮に2者以上の入札で調査基準価格まで落札率が下がった場合は、11億円なりの大きな差が生まれていたんではないかということで提示をさせていただきます。右下の黄色い部分、2者以上の応札だと低入札調査実施件数は残りの10件のうち8件が低入札であります。実際は91%より下がって応札をしているケースが多いという認識でよろしいかと思います。
それでは改めて、本市において個別の案件に対して、同種の工事の施工実績や配置技術者の施工実績の評価項目などを設定するプロセスはどの部局が担っているのか、財政局長に伺います。
○副議長(菅原進) 財政局長。
◎財政局長(大村研一) 総合評価落札方式についての御質問でございますが、総合評価案件における評価項目につきましては、工事ごとの特徴を考慮の上、工事所管局と財政局で協議し、学識経験者である川崎市総合評価審査委員複数から意見聴取を行い、川崎市総合評価審査委員会の審議を経て決定しております。以上でございます。
○副議長(菅原進) 野田議員。
◆14番(野田雅之) 答弁では、個別の案件に対する評価項目の設定については、工事所管局と財政局が協議し、川崎市総合評価審査委員会の審議の後に決定するとのことでありました。そこで、今回のケースについてですが、上下水道局の担う総合評定値の1,200点以上を条件とする工事においては、なぜこの条件をつけ続けてきたのか、また、今後これらの項目が必要であることを考え直す必要があると思いますが、ここでは工事所管局でもあります上下水道事業管理者に見解を伺います。
○副議長(菅原進) 上下水道事業管理者。
◎上下水道事業管理者(金子正典) 評価項目についての御質問でございますが、上下水道局では、市長部局に準じた川崎市上下水道局総合評価一般競争入札実施要綱において、本市における同種工事の施工実績等を必須の入札評価項目としており、工事の品質確保の観点から、要綱の定めのとおり評価項目を設定してきたところでございます。近年の入札におきましては、1者入札など競争性が低下している状況もございますので、今後は工事案件ごとに、必要に応じて評価項目及び評価基準の設定について関係局と協議検討し、より適正な執行を図ってまいります。以上でございます。
○副議長(菅原進) 野田議員。
◆14番(野田雅之) 上下水道事業管理者からは、今後は工事案件ごとに、必要に応じて評価項目及び評価基準の設定について関係局と協議検討し、より適正な執行を図ってまいりますとの答弁でありました。今回の事例では、上下水道局を対象とさせていただきましたが、大型案件に対しては、ガイドラインにも記載されている適切な技術力を持たない不良・不適格者には、市外や準市内として登録する、全国展開をする大手・準大手・中堅ゼネコンは到底当てはまらないわけでありますし、今回の評価項目により競争性が極めて妨げられることが明白となっております。上下水道局だけでなく、本市の各局が担う大型発注案件において、今回の評価項目が継続採用されてしまった場合、応札者数が減少し、落札率の高どまりも十分懸念されますが、見解と今後の対策を入札契約制度・発注等検討委員会の座長を務める三浦副市長に伺います。
○副議長(菅原進) 三浦副市長。
◎副市長(三浦淳) 総合評価落札方式についての御質問でございますが、予定価格が数億円以上となる大規模な工事につきましては、より適正な履行の確保が求められますことから、総合評価方式において過去の施工実績に関する評価項目を設定することは重要なことであると認識をしております。しかしながら、一部の案件につきましては応札者が減少している状況がございます。こうしたことから入札の競争性を確保するため、その原因について調査分析を行い、総合評価方式における評価項目のあり方について、現在設置しております入札契約制度・発注等検討委員会で検討し、取り組みを進めてまいりたいと存じます。以上でございます。
○副議長(菅原進) 野田議員。
◆14番(野田雅之) 検討し、取り組みを進めてまいりたいというお話をいただきました。例えなんですけれども、さらに大型のWTO案件で考えますと、先ほどのように最低制限価格失格基準が適用なしとなりますので、本来ダンピングして品質や安全がおろそかになることは避けなければいけませんけれども、先ほどの比較対照としました91%、低入札調査基準価格率よりさらに低い落札率になることも大いに想定されます。その際は、先ほど提示しました1者応札での落札率99%と、複数応札となった場合、仮に落札率が10%下がると想定した場合、WTO案件で仮に50億円の案件だとしますと5億円の差が開きますし、今後計画されています新庁舎建設にもしこのような条件をつけますと、仮に400億円だとしますと40億円の差が工事費で出る可能性があります。狭き門のために、いわゆる巨額な税金が無駄に使われるおそれがありますので、本市においては一定額以上の全ての案件に対して総合評価落札方式を採用していることは、工事の品質向上や優秀な市内企業などの育成なども鑑みると、その取り組み姿勢は評価されるものだと思いますし、市内企業の育成にも大いに役に立っていると思われます。
しかしながら、全国展開をしている実績を積む大手・準大手・中堅クラスのゼネコンは、先ほどから言っておりますように、ほぼ同じ施工能力を備えておりますし、仮に新庁舎が400億円、500億円の物件でも、やはり相当な数が施工能力を備えていると考えられます。デメリットとして答弁を受けた中には、事務量とのバランスを考える必要があるということも、総合評価落札方式に多少問題もあるのかと思いますけれども、発注部局の案件によっては、今後、競争性がしっかりと保たれて、複数者による応札がしっかりと行われていくようにお願いをいたします。部局によっては競争性が担保されているような部局もありますけれども、とにかく入札に参加したい企業の足かせをしっかりと取り払って、複数の企業による公平な応札を促して、市民、本市にとって大切な血税が無駄に使われることのないように強く訴えさせていただきます。また、今後もしっかりと見届けることをお伝えし、かつ、市内の企業にはしっかりと活躍の場を与えていただきますようお願いし、質問を終わらせていただきます。